謹んで新春のお慶びを申し上げます。

『今日降る雪のいやしけ吉事』(万葉集)

元号が令和に改まって初めての正月である。

万葉集の『初春の令月にして、気淑く(よく)風和らぎ』から二文字が引用された。

天平二年、大伴旅人の館での梅花の宴で詠まれた三十二首の序文の一節である。

令和の背景には、初春のよき月、清々しい空気、穏やかな風の季節感がある。

そこに平和の願いが加わる。まさに新たな時代に相応しい印象の元号であろう。

改元の行事も滞りなく終わり、

二年の今年は再び東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。

半世紀のときを経た今回は、広島にとっても被爆75年の重要な意味を持つ。

令和の広島を生きる世代には、地方再生と揺るぎない平和の創造を期待したい。

日本の古典に由来する令和は、悠久の歴史を未来の希望につなげる二文字である。

万葉集をまとめた大伴家持は万感の思いを込め、次の歌で四千五百首の掉尾を飾った。

『新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事(よごと)』

瑞兆とされる初春の雪が積もるように益々の吉事よ続けと、祈りを捧げている。

美しい日本の自然と文化の中で、吉事が重なる時代の訪れを願っている。

年頭謹白

本年の皆様のご健康とご多幸を心から祈念いたします。

令和二年元旦