所感

新しい世界へ

コロナウイルスの感染拡大、パンデミックの終わりが見えない。

地球規模での人や物の移動を背景に、感染は瞬時に拡がり、

対応に浮足立つ国と堅実に行動して成果をあげる国との違いが顕著に表れている。

ロックダウンを行ったイタリアや英国では、国民にステイホームを強制して、

あたかも警察国家の様相を呈した。ウイルスは民主主義をも冒しつつある。

安倍首相は国民の意識に期待し、自粛を基本とした対策に終始している。

朝令暮改との批判の中、精一杯の努力で難局に臨む姿勢は総じて評価できよう。

一方、いずれの国でも、コロナ革命とも言うべき状況が起きている。

あらゆる分野で問題が噴出し、医療の態勢はもとより、企業、学校、店舗、家庭、

そして人との接し方においても、これまでの常識が通じなくなった。

パンデミックが終息した後、世界はどう変わっていくのだろうか。

今年の国連報告書では、パンデミックは、子どもや高齢者、障害者、移民、

難民などの貧しい人々や脆弱な立場の人々への打撃が大きいとし、

医療や教育に関する数十年の進歩を後戻りさせていると指摘している。

「教育は世界を変える最強の武器だ。」

アパルトヘイト、人種隔離政策の撤廃に尽力した南アフリカのマンデラ大統領の

言葉である。

国連のグテーレス事務総長は、この精神に則り、各国に教育への投資を増やすよう

呼びかけた。

新しい世界を切り開く人材の育成は喫緊の課題である。

貧富の格差や人種差別をなくし、感染症などの疾病を克服して世界平和に

貢献するためには、強靭な心身と利他の精神を有する人材が必要となる。

国家においても同様である。コロナ対策で、日本は国際的に評価を得た。

もはや経済大国とは言いがたい我が国は、様々な課題処理に汗をかき

模範になることで、国際社会からの信頼を勝ち取るしか生きる道はないのである。

令和二年 初秋